ウイルス性胃腸炎
今年も冬から春にかけて「嘔吐(おうと)と下痢の子供を多く診察しました。
ウイルス性胃腸炎で、ロタウイルスやアデノウイルスによるものが多く、ロタウイルスでは白色の下痢便となることもあります。
この病気は、きまって吐くことより始まり、何を与えてもすぐもどし、少し遅れて下痢となります。
子供は嘔吐と下痢で水分を失い、元気なく、ぐったりとして親を心配させます。特別な薬はなく、水分を与えて脱水を防ぐことが何よりも大切です。
水様性の下痢をしているからといって、水分を与えないでいると、ますます脱水 がひどくなります。下痢の状態でも腸からの水分吸収は良いのです。
経口での水分補給がうまくいくと点滴をしなくても済みますが、脱水が進めば点滴輸液が必要となります。
脱水を知るポイントは、舌の湿りと排尿時間です。
みずみずしく湿っていた舌が乾いてきたり、排尿が乳児で十時間以上、幼児で十二時間以上なければ強い脱水です。
そのほか、元気がなくなり、目が落ちくぼんできたり、皮膚の張りがなくなってきたら点滴が必要となります。
水分の与え方としては、20ml位の少量より始めます。
吐き気のないことを確かめて、十五分~三十分間隔で水分量を増やします。
嘔吐の強い時には嘔吐止め座薬が使われます。
与える水分は、室温のスポーツドリンクが手ごろでよいでしょう。
適度の電解質と糖が入っていて、点滴成分に比較的近いからです。ごく少量の塩を入れたお茶もよろしい。
嘔吐がなければ欲しがるだけ与えて下さい。
水分もとれて、欲しがるようであれば、下痢のあるときは、消化の良いよく加水した炭水化物から始めます。
やはり昔からのおかゆが一番です。少しだしを入れて薄味をつけてもよろしい。
ウイルス性胃腸炎では、腸の粘膜が一時的に乳糖過敏になっており、乳糖負荷がかかると下痢を長びかせるので、乳製品ひかえて下さい。
食餌がとれるようになれば、スポーツドリンクの必要はなく、むしろ虫歯の原因ともなり、お茶で十分です。
嘔吐・下痢の胃腸炎の場合も腹痛を訴えます。
ウイルス性胃腸炎と思っていたら虫垂炎や、腸重積を合併していたということもあります。
腹痛・嘔吐は、心理的なものから重大な病気までの幅広い症状であり、重視すべき症状です。